汝の時間を知れ
経営者の条件(1966年)抜粋
第二章 汝の時間を知れ その1
(成果をあげるために自らをマネジメントする方法)
【成果をあげるために身につけておくべき習慣的な5つの能力】
- 何に自分の時間がとられているかを知る。(第二章:汝の時間を知れ)
- 外の世界に対する貢献に焦点を合わせる。(第三章:どのような貢献ができるか)
- 強みを基盤にする。(第四章:人の強みを生かす)
- 優れた仕事が際立った成果をあげる領域に力を集中する。(第五章:最も重要なことに集中せよ)
- 成果をあげるよう意思決定を行う。(第六章:意思決定とは何か、第七章:成果をあげる意思決定とは)
【第二章 汝の時間を知れ】
- 私の観察では、成果をあげる者は仕事からスタートしない。時間からスタートする。計画からもスタートしない。時間が何にとられているかを明らかにすることからスタートする。次に時間を管理すべく、時間に対する非生産的な要求を退ける。そして最後にそうして得られた自由になる時間を大きくまとめる。
したがって、時間を記録する、整理する、まとめるの三段階にわたるプロセスが、成果をあげるための時間管理の基本となる。
- 時間こそ真に普遍的な制約条件である。おそらく時間に対する愛情ある配慮ほど成果をあげている人を際立たせるものはない。
- 知識労働者には自らの方向づけを自らさせなければならない。そのため、何が、なぜ期待されているかを理解させなければならない。自らが生み出すものを利用する人たちの仕事を理解させなければならない。そのためには多くの情報、対話、指導が必要となる。ここでも時間が必要となる。
- 仕事の関係に人間関係がからむと、時間はさらに必要になる。急げば摩擦を生ずる。あらゆる組織が仕事の関係と人間関係の複合の上に成り立つ。ともに働く人が多いほどその相互作用だけで多くの時間が費やされ、仕事や成果や業績に割ける時間が減る。
- 高い生活水準というものは創造と変革の経済を前提としており、創造と変革は時間に対して膨大な要求を突きつける。
- 時間を浪費する非生産的な活動を見つけ、排除するための3つの方法
- する必要のまったくない仕事、何の成果も生まない時間の浪費である仕事を見つけ、捨てる。
- 他の人間でもやれることは何かを考える。
・ 自らが行うべき仕事を委譲するのではなく、自らが行うべき仕事に取り組むために他の人にできることを任せることは、成果をあげるうえで必要なことである。
・ 重要なことに取り組めるようになるには、ほかの人にできることはほかの人にやってもらうしかない。 - 自らがコントロールし、自らが取り除くことのできる時間浪費の原因を排除する。
・ 「あなたの仕事に貢献せず、ただ時間を浪費させるようなことを私は何かしているか」と定期的に聞けばよい。答えを恐れることなくこのように質問できることが、成果をあげる者の条件である。
第二章 汝の時間を知れ その2
(成果をあげるために自らをマネジメントする方法)
【成果をあげるために身につけておくべき習慣的な5つの能力】
- 何に自分の時間がとられているかを知る。(第二章:汝の時間を知れ)
- 外の世界に対する貢献に焦点を合わせる。(第三章:どのような貢献ができるか)
- 強みを基盤にする。(第四章:人の強みを生かす)
- 優れた仕事が際立った成果をあげる領域に力を集中する。(第五章:最も重要なことに集中せよ)
- 成果をあげるよう意思決定を行う。(第六章:意思決定とは何か、第七章:成果をあげる意思決定とは)
【第二章 汝の時間を知れ】
- あらゆる人の時間を浪費してしまう、マネジメントと組織構造の間違いに起因する4つの時間の浪費。
- システムの欠陥や先見性の欠如からくる時間の浪費
・繰り返し起こる混乱はずさんさと怠慢の兆候である。 - 人員過剰からくる時間の浪費
・人が少なすぎるということはありうる。人がすくなければ仕事のできあがりはよくないかもしれない。だがそれは一般的な状況ではない。むしろよく見られるのは、成果をあげるには人が多すぎ、したがって仕事をするよりも互いに作用し合うことにますます多くの時間が使われているという状況である。 - 組織構造の欠陥からくる時間の浪費:会議の過剰
・会議は原則でなく例外にしなければならない。みなが会議をしている組織は何事もなしえない組織である。時間の四分の一以上が会議に費やされているならば、組織構造に欠陥があると見てよい。会議が時間の多くを要求するようになってはならない。会議の過多は、仕事の組み立てや組織の単位に欠陥があることを示す。 - 情報に関わる機能障害
・経理部にはすべての情報が整っている。問題は、どのような数字が欲しいかということを誰も経理にいわないことにある。
- 時間の浪費を招くマネジメント上の問題は直ちに改善する必要がある。
- 地位が上がるほど、管理のしようのない時間、しかもいかなる貢献ももたらさない時間の割合が大きくなる。組織が大きくなるほど組織を機能させ生産的にするための時間ではなく、組織を維持し運営するための時間が多くなる。
- 大きな成果をあげているある人は、緊急かつ重要な仕事とともに気の進まない仕事についても締め切りを設けたリストをつくっている。それらの締め切り日に遅れ始めると時間が再び奪われつつあることを知る。
- 時間を管理できなければ、何も管理できない。そのうえ時間の分析は、自らの仕事を分析しその仕事の中で何が本当に重要かを考えるうえでも、体系的かつ容易的な方法である。
- 汝自身を知れとの昔からの知恵ある処方は、儚い身の人間にとっては不可能なほどに困難である。しかしその気があるかぎり、汝の時間を知れとの処方には誰でも従うことができる。その結果、誰でも貢献と成果への道を歩むことができる。